夜が明けてきた。
日が昇ろうと
日が沈もうと
関係なく坂は存在する。
泣きたくなる。
いや、坂を見ると吐きそうになる。
一般的な感覚として
風光明媚で外界を見下ろす地を
訪れたとき
「登って良かったね。気持ちいいし
あとは下るだけ」
とある種の達成感を得るのだが
登り終えて、また登る。
下っても、またすぐに登る。
登る、登る
ひたすら登る。
宿場町らしい風景も
見えてきた。
<指定コンビニ>
ファミリーマート
新中津川落合店
86km
23 :00~11:00(到着予想時間)
指定コンビニとはエイドと違い
スタッフはいなくて
トイレやちょっとした休憩を
気兼ねなく使えるコンビニのことである。
仮眠で養った英気も
長続きはしなかった。
足のつりこそ無くなったが
疲労困憊は間違いない。
心臓破りの坂なんて例えがあるが
「いったい斜度は何度?」
車ななら絶対ローだよね。
マジで心臓が止まるんじゃないかと。
真面目にリタイヤの選択が頭を過ぎる。
「マジかよ~」
「勘弁してよ」
「もう、いいわ」
「またかぁ・・」
坂の数だけボヤキが増える。
人の一生は重荷を負うて遠き道を行くがごとし。
昔の人は凄かったなあぁ。
根性や辛抱が違う。
もう石畳もいいって!
と、またボヤく。
俺は家康にはなれない。
と思ってみても
現実からは逃れられない。
登って、下ってまた登るんだったら
地形のことはわからないけど
どうか尾根伝いに歩かせてくれ〜
唯一の救いは
明け方の冷え込みがなかったのと
強烈な眠気が
仮眠のお陰で回避できたことだった。