波音をBGMに
過ぎ去った夏を惜しんで
恋人たちが語らう海辺のペアチェア。
そんな神聖なチェアに居座る
57years oldの男。
空港に向かって下降する
エアから見ても
間違いなくシュール過ぎる絵だ。
いいんだ。
もう秋だ
海には誰もいない。
70年代にはそんな歌もあった。
琉球畳を敷き詰めた
洒落た民宿の部屋。
海が見えるテラス付きになると
それなりにコストも必要だし
たっぷりと海は堪能したから
良しとしよう。
夕食は鯛しゃぶだ!!
3連休なのに
今のところ客は自分ひとり。
気兼ねなく過ごせて
最高じゃないか。
思えば
気の利いた観光施設やスポットは必要ない。
潮の香りと
さざ波の音を
風が運んでくりゃ
それで大丈夫。
鯛を鍋のお出汁にくぐらせ
舞い踊らせてると。
「こんばんは。お邪魔します」
と、この宿のご夫婦。
手には缶ビールが握られている。
聞けば、訪れた客との乾杯が
この宿の流儀らしい。
素敵じゃないか。
こちらも
夜の海を眺めながら
飲むつもりもなかったので
大歓迎だ。
ビールに酒にカクテル・・
鯛も舞い踊り、まるで竜宮城だな。
6時スタートの夕食
からの楽しい酒宴は
結局11時まで続いたのである。
実は私にとっても珍しいことで
馴染みの店でも
店主と会話をすることは滅多に無い。
こちらが気を使って
話すことはあるが
一人で飲んでる方が気が楽なのだ。
瀬戸内に浮かぶ小さい島で
宿を営む若い夫婦に
興味もあったからか。
会話が弾むとともに
暗闇が海を包み込んでゆく。
その暗闇の海に沈むかのように
部屋に帰り着くなり
深い眠りに入った。