ちょうど良い酒量だったのか
いや、何よりも楽しい時間だったのだろう
ストレスのない朝を迎えた。
今朝も
ハート型の玉子焼が
lonely 57years oldの男には眩しすぎたが
躊躇することなく口に運び
朝食を終えて、
珈琲カップ片手に朝の海へ出た。
秋らしい雲が
夏との訣別を決定づける。
瀬戸内に浮かぶ小島で
残り2年のカウントダウンサラリーマンの
行く末でも考えてみようと思ったが
意外と頭が切り替わらない。
毎年夏が訪れるたびに
タイトルに“夏”がついた文庫本を数冊買うのが
10年近くルーティンになっていて
読みかけの“夏”を読むことにした。
クズ・ワルしか出てこない 最低・・
と表紙に書いてあるが
本当にクズとワルばかりで
読んでて気分が悪くなった。
ある意味、小説のすごいところだ。
しばし、文庫本をたたみ
刻一刻と変化する
海の色と雲の流れに見入った。
この旅は
「すごく楽しかったよ」
でもなく
「つまらなかった」
でもなく
プラス・マイナス0な感覚が
心地よい。
特に何も求めちゃあいないし
やるべきこともない。
常々思っているが
物事の本質は至ってシンプルだ。
人間が面倒にしているだけである。
宿のご夫婦に別れを告げ
恒例となった
島をバイクで周ることにした。
既にシマでは回覧板が
回っているかもしれない。
「不審なバイクが島をぐるぐると
回っています。乗っているのは
50過ぎの男と思われますので注意を」
なんて、妄想してみたけど
回覧板回すほど人に会ってないしなぁ
しかも、宿の方に聞くと
島の買い物先も今や
本土のイオンやデパートではなく
ボタン一つクリックすれば
海も難なく荷物は飛び越えてきてくれる。
回覧板どころか
LINEグループくらいは
使いこなしているかもしれない。
いや、それどころか、
シマに上陸するや否や
シマの監視カメラとGPSが瞬時に身元を判明して
数分後にはデータ分析され
各家庭へ電送されているかもしれない。
そんな妄想を掻き立てる島とも
お別れの時間が迫ってきた。
海は夏だけではない
燕がヒュルリと舞う晩秋の北陸や
荒れ狂う海に雪が舞う
厳冬の日本海を訪れるのも
魅力的だと思う。
島を後にしてからは
なんとなく現実感が戻り
頭の中ははラーメン一色
になっていたので
ググッと地域人気店を目指した。
島暮らしが2日続いたせいか
ナビを使いながらも道に迷い
到着したのは午後2時を少し回っていた。
それでも、10人程の待ち人がいて
数分後には私の後ろに10人程の待ち人が
追加された。
恐るべしラーメンの力。
その力と麺を噛み締め
家路へとハンドルを切った。
また来る夏の日まで
おさらばだ。