新蕎麦の季節がやってきた。
蕎麦には目がないので
古民家で営む蕎麦屋を訪ねた。
街中と違って
さすがに冷える
さらに、昔の家は隙間だらけだから
どっからともなく
深々と冷えてくるのである。
そして
暖炉からパチパチと木が燃える音と
微かに木の香りが漂ってくる。
囲炉裏を囲んで蕎麦を食すなら
一献いきたいところだが
そうもいくメェ。
ここの蕎麦は十割蕎麦。
二八そばでツルンとした食感を
楽しむのも悪くはないが
新蕎麦で香りも楽しむのなら
十割蕎麦だろう。
蕎麦で満たされた後
紅葉の場に足を向けた。
これで見納めと言いながら
まだまだ
今年は暖かい日が続くせいか
紅葉も長く楽しめる。
こちらも風情ある
日本家屋だ。
凛とした静寂感が
世俗の雑念を取っ払ってくれる
珈琲カップから
立ち昇る湯気も
この場の時間の流れに同調するかのようで
心地よい。
季節の移ろいの中に身を置き
その季節の風に吹かれることは
ヒトという生き物と
社会生活を営む人間の
バランスを保つための行いだ
ひとりのアーティストが
茶房を切り盛りしていた。
人が遠ざかり
これから訪れる白い季節の
ことなど
知る由もない。
僅かに浄化された
心と体
里に降りれば
街はイルミネーションで彩られ
クリスマスソングが響き渡る。
そして
心を隠した人々の
笑い声が響き渡り
俗と酒にまみれた
饗宴が繰り広げられる。
そんな
虚空の季節感も
嫌いではない。