ポケットに手を突っ込んで
公園通りの坂道を歩きながら。
バイト帰りの電車の中
ゆらゆらと吊り革と揺られながら。
綺羅びやかなイルミネーションの中
孤独の風に吹かれながら。
22歳の冬の日
繰り返し聴いていたのは
カセットテープに入れた
マイセレクション
タイトルは“Blue Christmas”
Amazon Musicのプレイリストで
再現してみた。
Christmas Loveなんて幻想なのだ
この季節が来ると達郎先生が
東京の銀座で
地方の銀座商店街で
日本各地隅々で
39年間ずっと叫んでいる
「きっと君は来ない」と
ネガティブなワードで埋め尽くされている。
「ラストクリスマス」「ひとりぼっちの」
「最後のホーリーナイト」
知っていたのだ。
恋人たちと過ごす幻想のChristmasを
時はバブル前夜の時代
東京のクリスマスは
クリパに始まって定番の赤プリまで
誰もがChristmasに浮かれていた。
そんな波に乗り切れず
孤独を噛みしめる中
切ないクリスマス・ソングが
22歳の自分とシンクロしたのである。
そして
Blue Christmas
とラベルシールに手書きし
カセットテープのケースに貼り付けた。
恋人と過ごすChristmasなんて幻想だ
雨は夜更け過ぎに雪には変わらねぇ
切ないクリスマス・ソングのお陰で
百人の味方を得た気になり
彼女のいないやつも
用事のないやつも
Christmasを理由に休むから
朝まで人手不足のバイトを補ったり
少し尖ってみたりしたものだ。
あれから
35年ほどが経ち
ハイスクール時代の男子と女子で
一足早いChristmasを楽しんだ。
日頃予約の取れない有名シェフによる
結構値の張る
クリスマス・ディナーだ。
「美味しいね」という言葉に
「うんうん」と相槌を打つ
どうしたんだ35年前の孤独を思い出せ
Christmasは独りで過ごすんだよ
何を牙を抜かれているんだ
幻想に振り回されるんじゃない
日本男子はおでんに燗酒だろう
肩の上の方で22歳の俺が言い放つ
ワインやシャンパンでほろ酔いになりながら
有名シェフに「次は地酒に合わせてくれ」
と言うのが精一杯だった。
温暖化が叫ばれながらも
雨は夜更け過ぎに雪に変わりそうだ。
BlueなHOLY NIGHTに乾杯だ🎅