生まれ育った故郷を離れて
45年の年月が流れた。
年内最後の走り納めの地を
探しているうちに
望郷の念にかられ
ドコドコと訪ねることにした。
かつては水産業が栄え
高度成長期あたりの日本が
そうであったように
活気ある港町だった。
小学生の頃に
父親に連れられ
初めて寿司屋なる所に行った。
寿司、蕎麦、しゃぶしゃぶは
今でも大好きで
毎日食べても飽きない。
この時もとめどなく注文し
お腹が満たされるというより
子供ながらに
このまま注文し続けてはいけない
とブレーキをかけたことを
薄っすらと記憶している。
印象的だったのは
目の前のカウンターと
冷蔵ケースの間に
竹を割ったものが横たわり
水がチョロチョロと
流れていたことである。
寿司を手で掴んだあとに
洗い流す粋な施しだった。
今も残るこの寿司屋が
その店かどうかは分からないが
店に入った瞬間の雰囲気は
私のCPUに45年前に書き込んだ
記憶画像とは明らかに違っていた。
ランチのお任せ寿司を頼み
ご主人にポツリポツリと
話しかけてみた。
結果、人生初の寿司屋に
間違いはなかった。
どうやら
私が父と訪れただろう後に
移転をしたとのことである。
過去を辿る
四方山話と地ネタの寿司で
すっかり満たされた私は
ご主人に礼を言って
店をあとにした。
古いCPUに書き込まれた
地図案内は劣化しておらず
路地奥の方まで自然と足が向いた。
記憶された当時のデータを書き出すため
CPUが唸りを上げて高速回転を始めた。
しかし、経年劣化の為
書き出し不可能な映像も多々であった。
まだまだ現在進行系なのだ。
過去に浸り過ぎる時間と
思い出の記録映像を
強制的にシャットダウンし
harleydavidsonのセルを回した。
風が吠え始めると
白波が立ち
海が荒れ始める。
さて、焼き芋を食って
帰るか。