北海道の鰤
脂っこすぎず
いい脂の乗り具合だ。
瀬戸内の雄
穴子の出番だ。
炭火で丁寧に炙っては
垂れを塗り
また炙る。
丁寧に繰り返していく。
ホクホクだが
身はしっかりとしている
いい焼き加減だ。
回る寿司が台頭してきたのには
いくつかの理由があるが
大きなところとして
寿司屋の敷居の高さだったり、
誰もが震え上がる
「時価」という価格表示にも
原因はあるだろう。
また、主人の気質も欠かせない。
職人気質で寡黙な場合と
単に飲食店として、どうなの?
という、頑固を通り越して
短気なのは困りものである。
それなりのお代を取っている以上
客を不快にさせてはいけない。
回る寿司価格で
「腕は確かだが、俺は短気だぜ」は
まだ、許せるが。
玉(ぎょく)のお出まし。
昔は厚焼き玉子の味が
その寿司屋の評価だとも言われていた。
間違いない出来具合だ。
小鯛
白身の歯ごたえと
スッキリとした味わいで
終盤ながらに
まだまだ、イケそうに思ってしまう。
話を戻そう。
「ここはクラブ?」
と思うくらい
カウンター越しに
客と饒舌に喋る親父もいたりする。
町の寿司屋なんかは
こういったコミニュケーションも
必要だとは思うが、
私はあまり好きではない。
その点、ここの寿司屋は絶妙だ。
ランチタイムだったせいもあるかもしれないが
余計なことは喋らない。
凛とした佇まいで、
黙々と手間を掛け、寿司を握る。
かと言って
無愛想では決してない。
目配り、気配りが凄いのである。
お弟子さんに
絶妙なタイミングで
「お客様にお茶を」
「こちらの握りは男性のお客様に」
「お腹の張り具合は如何ですか」
そして、カウンターの中で
包丁を持つのにも
刃がお客様の方にある場合は
必ず刃を手で覆うことを忘れない。
一瞬の所作に
彼が積んできた修行や
仕事に対する誇り、
そして、接客の
本質が見えてくる。
鱚は魚自体美しいが
寿司になると
さらに美しさが増す。
締めに、再び雲丹を注文した。
海苔を外してもらおうか
迷ったが
ここまで丁寧に握ってこられた寿司に
素人の邪念を入れるのは無粋だと思い
思いとどまった。
最後のデザートは
豆乳プリン ピオーネソース
間違いない
私の大好きな
ピオーネだ。
私は何を食べても美味しく頂くし
実際美味しい店をたくさん経験し
満足度も高かった。
しかし、また行きたいという店は
数少ない。
料理人の生き様が見えてくる料理は
味を超えて
語り掛けてくるものがある。
会計後、ご主人は
エレベーターの入り口まで出向き
深々と頭を下げてくれた。
また、機会があれば
間違いなく
行ってみたい寿司屋である。